Posted 10月 24, 2019
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アンナ・ボーデン&ライアン・フレックによる監督作品「キャプテン・マーベル」で観客は、クリー帝国の首都星「ハラ」を訪れます。ここは、キャロル・ダンヴァース(ブリー・ラーソン)、またの名をヴァースの故郷でもあります。ほとんど全体が1つの巨大都市になっている「ハラ」は、この映画のために、ドイツのビジュアルエフェクトスタジオRISE FXによって作り上げられました。

RISE FXは、複合的な建造物や特徴的なパターンを持つ都市をいくつも作ってきた経験から、ハラをHoudiniのワークフローで構築しました。また、プロシージャルのテクニックもいくつか使っています。

「キャプテン・マーベル」予告


ハラ:概要

RISE FXは、プロダクションビジュアルエフェクトスーパーバイザーであるクリストファー・タウンゼント氏、同じくビジュアルエフェクトスーパーバイザーとして後から参加したジャネル・クロショー・ララ氏の指揮のもと、ハラのショットを制作しました。Marvelから提供されたコンセプトアートをもとに、都市のルック&フィールを設定することから着手しました。概要では、この都市は対照的な2つの区域で構成されていました。地下は質素に、地上は豪華で贅沢に見せる必要があります。 

「ハラに求められたのは、この作品のすべてのエフェクトと同じで、写真レベルの品質でした。現実に基づいていて、観客が自然に共感できるようにしたいと言うのです。その一方で、この類の映画では、地球外の存在だと示す必要もあります。この巨大都市の場合には、パターンや使われている素材、それにふんだんにある照明です」と、RISE FXのビジュアルエフェクトスーパーバイザーのオリヴァー・シュルツ氏。

ハラの地下のライティングは、RISE FXにとっては難題だった


ハラの構築

大量の建物、繰り返しのジオメトリ、高い詳細度の要求など、膨大な作業を伴う都市の構築に際し、RISE FXは効率的な作業環境を用意しました。構築プロセスは、Mayaでのレイアウトとアニメーションからはじまりました。その後、Houdiniでのアセットのシェーディング、ライティング、最終レンダリングを行います。これには、Mantraが使用されました。 

都市の地上部分には、コンセプトアートをもとに、光沢のあるシェイプで作成しました。背景の建物は、スキャタリングツールで作成しました。「単純なシェイプから始め、続いてプロシージャルツールで、必要な詳細を生成しました。これらのツールで、建物の上部にバリエーションを持たせたのです。実際に見えるのはシルエットだけですから、上層階にバリエーションを付ければよかったわけです」と、シュルツ氏。

「ここにはネオンサインのような照明がたくさんあり、加えて地上からのオレンジ色のグローや差し込む光の筋など、膨大な数の光が入り乱れていました。そして、どのショットでも差し込む光の筋を見せる必要があり、これにはボリュームライトが必要です。レンダリングの観点からすれば、まさに悪夢です。そこで、可能な限り複雑さを軽減するために、HoudiniのGIライティングを使ってすべてのライティング情報とGIキャッシュをプリベークしました。それを最終的なレンダリングで使うことで、処理を高速化できました」

オリヴァー・シュルツ | RISE FXビジュアルエフェクトスーパーバイザー

一方、ハラの地下は雑然とし、古びた雰囲気を出すためにより高い詳細度が求められました。「この地域の最終レンダリングでは、プロシージャルツールを使って素材や色のバリエーションを持たせました。たとえば、多くの定義済みパターンがあったので、そのパターンからシェーダを生成しました。そして、それらを個々の建物にHoudiniでランダムに適用すれば、必要とされる変化をつけられます。つまり、窓などの詳細も実際にはシェーディングで、すべてはプロシージャルで作成しています」と、シュルツ氏。

地下で特に難しかったのは、室内シーンのように見せることでした。「実際に非常に広大な環境なので、今までで最も手を焼いた屋内シーンでした」と、シュルツ氏。 

「ここにはネオンサインのような照明がたくさんあり、加えて地上からのオレンジ色のグローや差し込む光の筋など、膨大な数の光が入り乱れていました。そして、どのショットでも差し込む光の筋を見せる必要があり、これにはボリュームライトが必要です。レンダリングの観点からすれば、まさに悪夢です。そこで、可能な限り複雑さを軽減するために、HoudiniのGIライティングを使ってすべてのライティング情報とGIキャッシュをプリベークしました。それを最終的なレンダリングで使うことで、処理を高速化できました」

ハラの遠景や窓からの眺望にも、RISE FXが作成した3Dの建物とプロシージャルテクスチャが使われている


都市の再利用

ハラを作り終えると、そのほかのショットで都市の一部を再利用するのは比較的簡単でした。たとえば、窓から見える建物群、さらには登場人物が地下都市を抜けて移動するシーンなどがそれにあたります。 

「まず、シーンに登場させるシンプルな建物の構築から始めました。次に、ほとんどのショットで、窓からの見た目が面白いパターンになるように、建物を手動で配置しました。それができたら、建物にもう1段階上の詳細レベルを生成します。ある建物の1フロアの高さを割り出し、その情報を使って、高層ビルのように見えるジオメトリを生成しました。その次に、1つの階ごとに窓を生成し、リビングルームを区切るジオメトリを生成するといった具合です。つまり、これらはすべて、Houdiniでプロシージャルに生成しています。 

「これらすべての建物に灯す、ネオンライトを生成するツールも作りました。このネオンのライティングが、地下都市のメインパーツになるわけです。これも、プロシージャル的に生成しました。」

「とにかく都市が広大で、当初はシーケンスもずっと長いはずでしたから、はじめは少し怖いような気持ちにもなりました。そこで、『都市を旅して、それをすべて3Dで手に入れられるなんて、楽しいだろうな』と思うことにしました。最終的に、3Dの観点では、実際に最も手の掛からなかったシーケンスの1つになりました。ワークフローには何の問題もありませんでした」と、シュルツ氏。

RISE FXは、ハラのハンガーのショットもいくつか制作した


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