Enjoy the Completed Film!

2度の Houdini 新バージョン、短編アニメーション映画「Freelance」の完成、その間にもたくさんの出来事がありました。SideFX は、短編アニメーション「Turbulence」の完成を祝すとともに、制作のキーパーソン Magnus Møller、Christopher Rutledge、Jesper Andkjær へのインタビューを紹介できることを嬉しく思います。このプロジェクトは完全に Tumblehead Animation Studio および Christopher Rutledge によるもので、SideFX の R&D チームがそれを支援させていただきました。短編映画の制作途中での Houdini のバージョンアップは、見送るのが一般的でしょう。しかし、Houdini に搭載された最先端ツールを活用したいという欲求や熱意は、友人と一緒に短編アニメーションを制作したいという夢と同じくらいに強かったのです。

Magnus と Chris

Jesper

SIDEFX: それでは順にお話を聞かせてください。簡単な自己紹介からお願いします。

MAGNUS: Magnus です。デンマークのヴィボーにあるアニメーションスタジオ、Tumblehead の共同設立者です。私たちのスタジオは、UPA (United Productions of America) や Cartoon Modern といった古い時代のスタイルからインスピレーションを得た、カートゥーン調の 3D アニメーションを得意とし、楽しんで制作しています。また、高度なクリエイティブワークフローと最先端のテクノロジーの融合には、強い関心を持っています。クリエイティブワークフローにたくさんの可能性を拓いてきた Houdini ですから、私たちが熱い Houdini ファンだと聞いても驚かないでしょうね。

CHRIS: こんにちは! Chris です! 子供の頃からアニメーションを作ってきて、3D 業界にようやく足を踏み入れたのが 2015 年です。それから 1 ~ 2 年後に Houdini と出会い、大いに楽しんで習得していたところ Magnus そして Tumblehead の作品に出会いました。特に熱中して取り組んできたのがキャラクタ作りと短編映画の制作です。しかし、その分野で Houdini が使用されている事例は多くないように感じていました。Magnus と知り合い、SideFX への愛を熱く語り合ううちに、Houdini を使って一緒に映画制作ができたら素晴らしいと思いました。

 JESPER: こんにちは、Jesper です。Tumblehead のアニメータになって 4 年ほど経ちました。アニメーションに出会って勉強をはじめた頃は、主にカートゥーン調の 2D のキャラクタアニメーションを制作していました。2D よりも窮屈で制限が多いように感じたことから、3D アニメーションは敬遠していたのです。そんな私にとって、2D の遊び心と柔軟性を 3D に取り込んだ Tumblehead のやり方は理想的でした。Houdini をはじめとする優れたツールやソフトウェアを試しながら、CG ジェネラリストへ転身することができました。

SIDEFX: そもそもこのアイデアはどのように形になっていったのでしょう? 飛行機恐怖症の人がいるのでしょうか?

CHRIS: ずっと若い頃、乱気流に遭遇すると、死ぬかと思うほどの恐怖に襲われると同時に、妙にワクワクする感覚を覚えたんです。「飛行機が墜落し始めたら、自分にできることは何もない。それなら、最期の瞬間を思いきり楽もう!」といった感じです。これをテーマにしようというアイデアは、ずっと頭にありました。各地のアニメーション映画祭を飛び回っていた当時、アヌシーを訪れてマグナスと出会い、その思いが再燃しました。

特に掘り下げたかったのは、乱気流に遭遇したときの感情です。自分は死の恐怖にとりつかれるのに、周りを見ればほかの人はいつもと変わらない。それを見て冷静になりもすれば、いっそう不安に駆られたりもします。Magnus にそれを話すと、乱気流をテーマにした映画は楽しそうだし、面白いエフェクトやプロシージャルのセットアップ、キャラクタの演技、リグ、アニメーションをたっぷり組み込めそうだと意見が一致しました。

私たちの中に本物の飛行機恐怖症がいるかどうかは分かりませんが、飛行機が乱気流に遭遇したり、離着陸のたびに、私は少し不安とワクワクが入り混じった気持ちになります。

SIDEFX: ストーリー、キャラクタデザイン、全体のスタイルは、どなたが担当されましたか?

CHRIS: キャラクタデザインは、Tumblehead らしい従来のスタイルに、アニマティック用に私が描いた可笑しなスケッチをミックスしたものです。アイデアについてたくさん話し合い、いくらか脚本らしきものやメモを書きました。スタジオのストーリーボードアーティスト Benjamin Agersted がそれに基づいてストーリーボードを描きました。そのボードを受け取ると、私が描いた拙いスケッチをそこに組み込んでラフアニメーションにしました。効果音や音声を追加した後、Jesper がそのアニマティックをもとに、iPad の Nomad Sculpt を使ってほとんどのキャラクタをモデリングしました。

目標にしたのは、素晴らしい「Tumblehead スタイル」を取り入れながら、ディテールへのこだわりを盛り込んだいわば「Chris Rutledge」スタイルを作ることでした。ちょうど良い落としどころを見つけられたと思います。私たち全員の能力、スタイル、アイデアを結集した努力の成果がこの作品です:)



SIDEFX: すべての作業に Houdini を使おうと考えた理由は? 特にリギングとアニメーションについて聞かせてください。キャラクタアニメーションの分野では、Houdini は第一候補になりにくいでしょう。Maya ではなく Houdini を使うと初めて聞かされた Jesper の反応は、どうでしたか?

MAGNUS: Houdini でのリギングは、私の夢でもありました。KineFX が発表されたときは、心から喜びました。ノードと VEX を少し使うだけで、かなり高度なセットアップを素早く作成できます。それまでの作業ペースとは大違いでした。しかし当時はまだ、複数のキャラクタが登場するショットワークフローには対応していません。したがって、KineFX の機能を拡張する APEX が登場したときは飛びつきました。もちろん、頭に浮かんでいたのは APEX と KineFX を使って短編映画を制作する道です。

JESPER: アニメーションはもっぱら Maya で作っていて、ノードもほとんど使ったことがなかったんです。まったく新しい作業方法を学ぶ必要があるため、最初は少し不安もありました。使い始めてみると、学ぶことがたくさんあるとはいえ、アニメーションはアニメーション。技術的なルールは同じです。ノードやレイアウト、ショートカットの使い方にいったん慣れてしまえば、後はそれほど難しくありません。それに、Houdini でショットをセットアップすれば、エフェクトの追加やジオメトリの編集がはるかに速くなり、ワークフローがよりクリエイティブになります。

CHRIS: 付け加えると、キャラクタアニメーションに Houdini を使うのが一般的でないのも、Houdini を使う面白さの 1 つでした。リグにアクセスして、各種のセカンダリエフェクトやシミュレーションを同一ソフトで実行できるのは実に素晴らしく、独自のテクニックやスタイルも見つけやすいのです。Houdini なら、独創性を発揮できるチャンスが無限にあります。Saša Budimir や Rich Lord らの発想は飛び切り素晴らしく、そのような人たちが作るプロシージャルのキャラクタリグは見ていて楽しいものです。そうしたことに挑戦する人が増えるよう、刺激的な活動を続けていきたいと思っています。

SIDEFX: Houdini でのアニメーション制作について、現在どう思っているか聞かせてください。  

JESPER: アニメーションツールとインターフェースのおかげで、Houdini でアニメーションを付けるのが自然に感じられます。統合された選択セットやインビトウィーニング (補間) ツールは直感的で、馴染みある使い勝手です。リグの衝突シミュレーションや編集可能なモーションパスなど、じっくり試していない機能もたくさんありますが、アニメーション制作を大幅にスピードアップしてくれそうです。新たな方法でワークフローを改善し続けられることが、楽しみで仕方ありません。ツールがさらに統合され、Houdini 経験の浅いアニメータにも使いやすくなることを期待しています。


アニメータが Houdini を好きになる理由!

Magnus Møller & Jesper Andkjær | Tumblehead

SIDEFX:  Tumblehead Animation Studio が Houdini を使うようになってずいぶん経ちます。短編「Tales from the Multiverse」 (2018 年) にはじまり、「The Swineherd」 (2021 年) で Solaris を導入し、「Freelance」 (2023 年) は Karma XPU を導入した最初のプロジェクトでした。この経緯を教えてください。Houdini を最初に導入したタスクとその理由は?

MAGNUS: 以前は Maya と Redshift を使っていました。しかし、ショット、アセット、そしてパイプライン全体のフローを簡単に構築するための機能がありませんでした。Maya でカスタムの Python ツールをいくつも作りましたが、必要以上の作業をしているような気がしていました。Houdini を試してみると、ノードベースのアプローチを念頭にしたわかりやすい設計で、非常に堅牢な Python API も備えているので、すぐに使いこなせそうだと感じました。その後、Solaris と Karma が登場すると、Houdini 以外の選択は考えられなくなりました!

SIDEFX: 正常性、安定性、そしてプロジェクト用に作成したカスタムツールのサポートの観点から、ソフトウェアのバージョンを制作途中で変えることはないでしょう。なぜこの短編映画ではリスク回避のために単一バージョンの Houdini だけにしなかったのでしょうか?

MAGNUS: この短編では、Houdini 20 の新機能を積極的に活用することが目的のひとつでした。しかし、使いたい機能の多くは Houdini 20.5 に搭載されることになり、さらに COP も登場したので、アップグレードせずにはいられなかったんです。もちろん、制作途中でのソフトウェアのバージョン変更は望ましくありません。特にリリースビルドからアルファビルドへの移行は大きいリスクが伴います。血と汗と涙の結晶です…… (血は言いすぎですね)、しかし結果的には 100% その価値があったと思います。プロセスから多くを学ぶことができ、リスクを取った以上の見返りがありました。

汗の作成に使用した COP ネットワーク

SIDEFX: 「Turbulence」の制作開始時に使っていたビルドは?

MAGNUS: リースされたばかりの Houdini 20 のアルファ版でした。APEX は今とはまったく見た目が違い、APEX スクリプトもありません。唯一のインターフェースは非常に限定的なノードビューだけで、それも「プログラマーアート」とでも言うべき代物で、他の Houdini UI とはかけ離れていました。理解するまでは少し大変でしたが、楽しくもありました。R&D チームが新しいフレームワークを開発している様子を垣間見る機会は本当に興味深く、まるで映画「マトリックス」の世界をのぞいているようでした。詳しく説明してくれた APEX チームには、感謝しきれません。

SIDEFX: 作成したアセットの内訳を教えてください。

MAGNUS: 合計でキャラクタが 10 体、プロップが 6 個、セットが 2 個です。セットには飛行機の内装と外装、そして周囲の環境が含まれます。

SIDEFX: この短編の制作中、SideFX のサポートを受けたのはどの領域ですか?

MAGNUS: R&D とサポートチーム、特にリギングとアニメーションチーム、そして Solaris/Karma チームには大変お世話になりました。どんな質問にも答えていただき、本当に感謝しています!

私たちも多くを学びましたが、結果として、開発側も早期にたくさんのフィードバックテストを実施できたことは有意義だったのではないでしょうか。個別の小規模なテストにとどまらず、パイプライン全体の中でどのように機能するかを確認する広範なテストになったはずです。開発者とのセッションから生まれたアイデアの多くは 20.5 の新機能となり、今後のリリースでもいくつか追加される予定です。いずれにせよ、いつかは追加される機能かもしれませんが、特にリギングとアニメーション、それらの Solaris や USD との連携など、今後のロードマップの見通しに少しは貢献できたと思っています。

SIDEFX: 「実際に」COP で合成しましたか?

MAGNUS: はい、100% です! すべてのショットを COP で作成しました。まさに期待通りに機能してくれました。Houdini の新しいレシピシステムを利用して、レンダリングレイヤーと AOV に基づいて自動的にショットをセットアップするパイプラインも作りました。これもとてもうまく機能し、多くのタスクを自動化できました。 NPR テクニックを試すのも面白い経験で、深度に基づいてアウトラインを追加したり、UV AOV に基づいて 2D の歪みの適用などを行いました。これらのエフェクトはジミー (主人公) がパニックに陥るショットに登場しますが、合成はすべて COP です。 現行バージョンの COP の主な欠点は、まだ *.exr ファイルに最適化されていないことです。次のリリースの優先事項だと聞いています。同様の用途で機能を試す場合は、この制限に留意してください。

Character

リギング & アニメーション

SIDEFX: この短編で最も興味深いのは、リギングとアニメーションに Houdini を使い、比較的小規模なチームで作成したこと、APEX グラフを使った新開発のフレームワークを使用したことです。この経験を振り返っていかがでしたか?

MAGNUS: 先ほど言ったように、Houdini 20 のアルファ版でリギングを始めていました。現在は APEX で利用できる HDA やノードの多くは、当時はまだ開発されていません。そこで私たちは、APEX リグネットワークを作成する、Python ベースのカスタムオートリガーを開発しました。プロジェクトにこれから着手するなら、オートリグコンポーネントと APEX スクリプトを使うでしょう。

私たちの API が APEX スクリプト (Python に非常によく似ています) 機能の一部の開発ヒントになっていて、そうした面からも非常にやりがいを感じます。今後は、APEX Python ラッパーを APEX スクリプトで書き換える予定です。

とはいえ、カスタムセットアップが稼働すると、リギングは実に簡単になりました。多少の制限はあるものの、リグのセットアップと修正はごくごく簡単でした。Maya では 1 時間かかっていた修正も、Houdini なら数分、短ければほんの数秒です。

Houdini のリギングとアニメーションがどう進化していくか、楽しみでなりません。業界で広く採用されるようになるまで、それほど時間はかからないでしょう。何しろ、素晴らしいツールですから。

SIDEFX: 現在の知識をもってこのアニメーションをもう一度作るとしたら、どのような点を改善しますか?

MAGNUS: かなり早期の段階で、この短編用のカスタムパイプラインが必要だとわかりました。アセットとショットを部門に分け、キャラクタやショットを別々の観点から並行して作業できるセットアップが必要だったんです。シンプルかつ少数のツールを想定していたのに、瞬く間に Houdini ベースの完全なパイプラインフレームワークに進化しました。このとき素晴らしい働きをしてくれたのが、パイプライン開発者の Søren Nørbek です! およそ 6 ヶ月を費やし、約 17,000 行もの効率的かつ無駄のない Python コードを書き上げました。

設計の柱の 1 つは、USD をパイプラインのルートにすることでした。そのため、すべての作業ファイルは /stage (Solaris) で始まります。このプロジェクトで重視したのは制作のすべての工程を Houdini で行うことです。各種コンテキストでの Houdini の使用を簡素化するのは理にかなっていました。/obj コンテキストが完全に Solaris に置き換えられた、未来の Houdini ワークフローを先取りしてみたかったんです。この考えには完全に同意できない Houdini ファンもいるでしょうが、私たちの進む方向はこれだと考えています。個人的な見解ですが、OBJ と Solaris を混在させると、不要に複雑さが増すように感じています。この新しいワークフローが現場の実用に 100% 応えるには、アニメーションと Solaris の相互運用性など、足りない機能がいくらかあります。しかし、そうした面の改善に開発者が積極的に取り組んでいるところだと聞いています。

 CHRIS: ツールについては、キャラクタベースの作品を一人で作っていたときに自作した、簡素なツールをいくつか使っています。具体的には「ジグラー」と「リグノイズ」です。「Turbulence」の講演でデモしたこともありますが、ジグラーはボーンのポイント位置を変更するだけでセカンダリモーションやオーバーラップなどをプロシージャルに追加、調整できる非常に便利なツールです (簡単に作ったツールですが、驚くほど便利です)。「リグノイズ」はスケルトンに基本的な回転ノイズを追加するだけのツールです。キャラクタが動かないときに、必要に応じてちょっとした回転を加えることで、「生きた」状態に保っておけます。揺れなどを追加することもできます。この種のエフェクトを KineFX でプロシージャルにレイヤー化できるわけです。今後、キャラクタアニメーションの分野で Houdini が独特の強みを発揮するのは、このような領域だと思います。キーフレームをすべてに設定する必要はありません。キーフレームをはじめとする「破壊的な」作業レイヤーに、プロシージャルな編集を組み合わせれば、柔軟性と効率が大幅に向上します。

MAGNUS: 当社の現在のパイプラインを、こちらからご覧いただけます。社内用にドキュメント化したものですが、弊社の取り組みに興味を持つ外部の方々にも役立ててもらえれば幸いです。


SIDEFX: Houdini でのキャラクタアニメーションで、予想外に良かった部分は?

 JESPER: 自動ジグル (微震) / セトル (沈殿) / オーバーラップ / オーバーシュートは時間を大幅に短縮してくれます。スタイルにもよりますが、キーフレーム設定から完了まで、あっという間です。一時的な拘束システムも素晴らしいですね。拘束をシンプルかつ簡単に編集できます。また、アニメーションノードの後でジオメトリを編集および変更できます。アニメータはリグの制約を超え、新たな柔軟性を得られます。

SIDEFX: APEX はまだベータ版です。欠けている機能のうち、重要な機能、優先的に組み込んでほしい機能をアニメータの立場から教えてください。

JESPER: アニメーションインターフェース (ビューポート HUD) のフローティングウィンドウが、画面領域を占有しすぎないようにしてもらいたいです。個人的には、UI をパネルにしてもらい、ビューポートがすっきりしている方が好みです。また、開発者たちが取り組んでいるところでしょうが、フローティング HUD ウィンドウにバグがいくつかあります。Scene Animate ステートと同期しないときがある、フリーズして削除できなくなるといった問題です。

絶対に実装してもらいたいのは、ステージを表示 / ゴースト化したまま、ビューポートでリアルタイム再生できる機能です。ステージをオフにするとセットまたはカメラがなくなるため、ショットの精度と再生速度のどちらかを選ばなければなりません (なお、この問題は OBJ コンテキストベースのワークフローでは発生しません。しかし「Turbulence」で当社は、パイプライン全体を Solaris で構築しました)。

もう 1 つ改善してほしいのは、タイムラインをスクラブする際のオーディオ再生です (開発チームが改善に取り組んでいるところだそうですが)。「Turbulence」のアニメーションを作成していたときは正常に動作せず、オーディオが常に少しずれていました。

MAGNUS: ポーズライブラリやポーズピッカーといった機能を心待ちにしています。成長を続けるアニメーションツールセットの大型補強になるはずです。 リギングに関しては、個人的には APEX でスプライン / リボンのようなセットアップが増えることを期待しています。また、リググラフ全体を呼び出すことなく、前のフレームからデータを取得できるようになると嬉しいですね。そうなれば、Scene Animate で直接 CHOP ライクなシミュレーションを作れます。

CHRIS: 私は、キャラクタアニメーションのほとんどを一人だけが作るような場所から来ましたが、当時から従来型かつ非プロシージャルのアニメーションシステムではなく、KineFX を使っていました。その中で面白いワークフローを見つけました。キーフレームとプロシージャルのハイブリッドで、基本的には、最低限のキーフレームを設定しておいて、ジグル (微震) やセカンダリアクションなどをプロシージャルにレイヤー化するのです。APEX に期待するのは、これの強化版です。このようなツールが組み込まれ、アニメーションレイヤーを使ってラフなファーストパス、微調整可能なプロシージャルジグルパス、そして最終的なポリッシュパスができたらいいですね。Houdini は、唯一無二のキャラクタアニメーションツールになる可能性を秘めていると思います。また、従来のキャラクタアニメータにも使いやすいものになるでしょう。

SIDEFX: 私たちは 2年以上にわたり協力し合い、たくさんのフィードバックを直接もらってきました。このようにすべてを包み隠さず公開するのは、企業がすべきこととは逆のように思えるかもしれません。しかし、別の見方をすれば、私たちが継続して開発しているのは、皆さんがアイデアやビジョンを実現するために楽しんで使用できるツールです。キャラクタアニメーションに限って言えば、開発が本格的に注目するようになったのは最近です。皆さんが経験した問題は、もちろん望ましくはありませんが、何を修正し、何を新たに作るべきかを知ることは Houdini の改善に役立ちます。Tumblehead に限らず、どんなタスクの担当でも、すべての人の利益につながるはずです。

CHRIS: SideFX の開発哲学と、プロジェクトに対するオープンな姿勢には本当に感謝しています。アルファ / ベータ版のテストプログラムにも楽しんで参加しています。SideFX が大切にしているのは、Houdini をできるだけ良いものにすることです。株主へのアピールや派手なマーケティングのために、年に一度華やかな機能をリリースしてそれっきりということはありません。特に、KineFX、APEX、Copernicus、Solaris、Vellum、Karma といった長期プロジェクトを継続しているのは本当に素晴らしいことです。展開当初は完成度が低く、コミュニティには使いづらい機能もありました。しかし、SideFX は継続して向上させ、最高の機能にするために必要な愛情を注いでいます。大掛かりでエキサイティングな新機能群が発表されれば、SideFX はそれにしっかりと向き合い、年々向上させていくと信じています。

MAGNUS: Chris の言う通りです。全く同感です。そもそも、私たちが Houdini および SideFX にこれほど熱くなれるのは、これが理由です。いつまでもその姿勢を貫いてください!

SIDEFX: 長い道のりでしたね。今日は主に、リギングとアニメーションについてお話しいただきました。コミュニティの皆さんに伝えたいことは、他にもありますか?

CHRIS: Houdini を使う人が増えて、様々な方向性で機能が強化されていったらいいですね。SideFX が FX ツールの枠を超えて Houdini を拡張していくのを見られたのは、素晴らしい経験でした。開発側がすべきことはたくさんあるでしょう。一方でユーザが Houdini を積極的に活用し続け、新しく、ユニークな結果を出すこともとても大切なことです。Houdini は未開拓の可能性を秘めた、極めて柔軟なツールです。コミュニティに参加し、フィードバックを提供したり、開発者に意見を届けることも大切ですね。フィードバックには、想像以上に大きい力があります!

SIDEFX: 今伺ったことのほかに、Houdini の領域あるいは特定のツールへの改善要求はありますか?

CHRIS: oudini の「リアルタイム」機能の強化です。例えば、タイムラインを再生しながらアニメーションをパペット操作したり、記録できるようになるといいですね。ソフトウェアがもっと速く起動すると嬉しいです。ちょっとしたことですが、大きい効果があります。リアルタイムレンダリング、シネマティックビューポート (Vulkan で開発中と聞いています)、アーティストフレンドリーなツールもどんどん追加してほしいです。ショットシーケンスツールの話も聞こえています。私のように Houdini を使ってショットだけでなく、映画全編を制作する者には有用なツールになるでしょう。

MAGNUS: 私の要望もほとんど Chris と同じです。Houdini がアニメーションコミュニティに普及することを期待しています。そのためには、Houdini がアーティストにとって抵抗なく使えるツールになる必要があると思います。具体的には、シンプルかつ洗練された / 合理的な UI と UX、アーティストフレンドリーなツール、ビューポートの向上 (アーティストは見栄えの良いビューポートが大好きです!) などです。

SIDEFX: 今回の短編に参加した人数は?

MAGNUS: 協力していただいた素晴らしい SideFX の皆さんを除くと、初期の脚本から最後のレンダリングまで、合計 19 人が参加しました。

SIDEFX: Chris はロサンゼルス、Tumblehead はヴィボー (デンマーク) ですよね。時差があり、商業プロジェクトもこなす傍らで、この情熱的なプロジェクトをどう進めていったのですか?  

CHRIS: Søren が Tumblehead のために構築した素晴らしいパイプラインツールのおかげで、しっかり同期できていました。互いのワークフローがよくわかっていたので、商業プロジェクトでの協働がはるかに楽になったことは、プロジェクトの成果の 1 つです。あのパイプラインを構築せず、「Turbulence」での学びがなかったら、Nike の広告を 1 ヶ月足らずで仕上げるのはずっと困難だったでしょう。

納期が非常に短いこのプロジェクトで、私たちのチームセットアップは、かえってうまく機能しました。私はロサンゼルス、彼らはデンマークでしたが、全員が同じファイルにアクセスでき、パイプラインにも慣れていたため、こちらが寝ている間に向こうは作業を進められたのです。私がミーティングのフィードバックをもらって調整や修正を加えたり、レンダリングを開始してしている間に、彼らは眠っているという具合です。つまり、基本的に24時間体制だったわけです。

「Turbulence」では時差が問題になったこともあります。でも、ヨーロッパでフェスティバル (Pictoplasma Annecy) に参加する合間の 1 ヶ月間をヴィボーに滞在し、Tumblehead チームと顔を突き合わせて作業できたことは楽しい経験でした。



SIDEFX: このアニメーション制作で使用したハードウェアについて教えてください。

MAGNUS: 私たちも Chris も、レンダリングには主に 4090 RTX カードを使っています。ワークステーションには、3070 以上のものも使います。それ以外では、CPU は Ryzen、RAM はほとんど 64GB です。

SIDEFX: すべて Karma XPU だけでレンダリングしたのですか?

MAGNUS: もちろん! すべてのショットを Karma XPU でレンダリングし、COP で合成しました。Karma でのレンダリングは楽しいのですが、最新のテンポラルデノイズテクノロジーが実装されるよう期待しています。そうなれば、レンダリングがより高速になります。

SIDEFX: 私たちが見逃した隠れ要素 (イースターエッグ) はありますか???  

MAGNUS: すぐに目に留まったかと思いますが、私たちのお気に入りのロゴが座席の模様になっています。

SIDEFX: 本日はありがとうございました。完成おめでとうございます!