Posted 7月 19, 2019
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ピクサーの新作アニメーション映画「トイ・ストーリー4」には、挑戦しがいのあるシーケンスがたくさんありました。エフェクトのアニメーション、シミュレーション、プロシージャルに生成されたエフェクトは、バズとウッディをはじめ、キャラクタたちの新たな冒険を語るうえで重要な役割を果たしました。

このようなシーケンスの多くは、ピクサーが積極的にHoudiniをワークフローに取り込んだことで、可能になりました。映画の冒頭に展開される豪雨の救出シーンは、Houdiniの力が大いに発揮されたシーケンスです。また、草木やクモの巣、ダスト、遊園地のまたたく光といったシーンでも、Houdiniが活用されています。ピクサーでは、パイプラインのどこにHoudiniを組み込むかについて、エフェクトアーティスト、シミュレーションアーティストがアイデアを共有しているのです。

ピクサーのHoudiniパイプライン

「トイ・ストーリー2」でのビデオゲーム、「トイ・ストーリー3」でのプレイタイムシーン、「カーズ2」での海、「インクレディブル・ファミリー」でのアンダーマイナーなど、近年のピクサー映画は、エフェクトがふんだんに使われたアクションシーケンスが冒頭を彩ります。その伝統は「トイ・ストーリー4」にも引き継がれ、どしゃ降りの雨の中、ラジコンカーのキャラクタRCをウッディと仲間たちが救出します。このほかにも、Houdiniの各種シミュレーションは、シーケンスの作成に大きく貢献しました。



ピクサーのエフェクトリード、アレクシス・アンジェリディス氏はこう語ります。「「トイ・ストーリー4」のエフェクトは主にHoudini 16.5を使い、すべてのアセットを作成しました。ツール担当チームから新しいビルド17.0が提供されたのは、製作も後半にさしかかったころです。あらゆるタイプのジオメトリ、シェーディングシグナル、ときにはライトやシェーダもHoudiniで作りました。アセットはすべて、いったんディスクに保存し、KatanaからRenderManを使ってレンダリングします。作業にはできるだけ早く取り掛かりたくはあっても、全体のビジョンとともにショットは日々進化していきます。ファイルを常に最新の状態に同期することに費やす労力は、最小限に抑えたいものです」

「エフェクトソフトウェアエンジニアのマイケル・ライスが、「トイ・ストーリー4」のために、2つの新しいワークフローを開発しました。Multishotと、Houdini Engine-RenderManプロシージャルワークフローです。Multishotを使うと、インタラクティブなタイムライン1か所から、複数のショットについて、詳細のカスタマイズが可能なネットワークを操作できます。RenderManプロシージャルワークフローによって、大規模なエフェクト作業に早いうちに取り掛かれるようになりました。この2つ目のワークフローは、豪雨の中での救出シーケンスで使用する要素を配置したときに、その有用性が実証されました」

アンジェリディス氏は、一般に、レンダリング時のプロシージャル処理と複雑なシミュレーションは両立できず、ピクサーの既存のパイプラインでは最終フレームまで保持することができないとも述べています。この問題を解決するために、Houdiniのパーティクルソルバを「分解」することもあったそうです。

「パーティクルシミュレーションでは通常、最初に時間、次にパーティクルの順番で2つのイテレーションループを利用します。パーティクルはいつでも全部が表示されているわけではありません。ループを逆にした方が良い場合もあります。また、動きの微分方程式を分析して解くことで、時間のループもなしで済ませられました。たとえば、マイケル・オブライエンが開発したデューク・カブーンのバイクの火花は、従来のパイプラインを使用し、それをHoudini Engineアセットに変換することで、アニメーションができる前にアセットを準備することができました」



豪雨の救出劇

水と雨は、言うまでもなく自然現象です。冒頭の救出劇のシーンでは、この自然現象をシミュレートする必要がありました。この作業で最も大変だったのは、おもちゃのクローズアップから、「ヒト」の隣人のエスタブリッシングショットまで、必要なショットのスケールが幅広かったことです。「クローズアップでは雨の環境を緻密に見せると同時に、ざっくりと大規模な修正がきかなくてはなりません。ゼロからはじめ、小さいスケールの詳細を大きいスケールに渡すようにしました。重要な役割を果たしたのは、ジオメトリのインスタンス化です。エフェクトソフトウェアエンジニアのマックス・ギルバートがこのパイプラインを担当し、HoudiniからUSDへ、インスタンス化をシームレスにつなげてくれました」と、アンジェリディス氏。





セットや人物、おもちゃたちに打ちつける大量の雨が見えなくてはなりません。また、水たまりになったり、跳ね上がったり、流れていくといった、環境とのインタラクションも必要です。景観全体の雨をシミュレーションするのは現実的ではなかったので、ピクサーは、シーケンスの特定の部分に絞り込むことにしました。アンジェリディス氏は次のように言います。

「救出劇のシーケンスは、ゲイリー・ブルーインズ、エリック・ロサレス、アリッサ・マーが指揮をとりました。この冒頭のシーケンスでは、シミュレーションとプロシージャルで生成した多数のカスタム要素に演出をつけなければならないことは、早くから明白でした。開発の早い段階では、ほとんどのショットに含まれ、かつそのまま残りそうな要素を選びました。ユニークで、多用なアプローチで取り組むべき要素は、いったん保留にして後でしっかり取り組むことにしたのです」

チームはHoudini EngineとRenderManのプロシージャルワークフローを利用して、空中を降下する雨や地面に落ちる雨、窓やクルマに当たって流れる雨をモデリングしました。「このワークフローなら、100のショットすべてを少ないファイルで扱うことができ、わずか数分で修正できます。それはまた、非常に細かい変更を広範囲に行えることを意味します。旧来のワークフローでは、手間がかかりすぎて現実的ではありませんでした」

「プロシージャルによるアプローチには、もう1つ利点がありました。降る雨を早い段階ですべてのアーティストに提供し、雨のほかの要素を重ねる作業を開始できたことです。1つひとつの雨粒を霧、波紋、しぶきに接続し、自然かつダイナミックな雨によるオクルージョンを得ることができました。当社の技術エキスパート、ジェームズ・ジャクソン、ブレット・レビン、ビル・リーブスが、CPUパルスに目を光らせ、最適化してくれたおかげで、膨大な数のショットを完成にまでもっていくことができました」



色々なタイプの水

救出劇のシーケンスには数種類の水と雨が必要で、ピクサーはクリエイティブな観点でアプローチを選択できるように、チームごとに扱う水のタイプを分けることにしました。キャラクタにかかるしぶき、側溝の流れ、地面から跳ね返る水しぶき。どのチームも何らかの形でHoudiniのFlipシミュレーションツールを使用しました。「エフェクトアーティストのグレッグ・グラッドストーンは、Houdiniの水のシミュレーション機能を率先して取り入れて、側溝の流れを作りました。同じくエフェクトアーティストのアミット・バッカーは、まったく新しい方法でプロシージャルを活用しました。このシーケンスで降ってくる雨を担当したのは、マット・ウォンです」と、アンジェリディス氏。





地面から跳ね返る水しぶきを担当したチームは、Flipシミュレーションを何度も行って、事前シミュレーションによる雨のクリップを用意し、Houdini Engineで一面の雨を降らせました。アンジェリディス氏はこう話します。「Houdiniのダイナミクスは非常に柔軟なカスタマイズが可能です。グレッグは、一定の雨粒によるしぶきを側溝の流体シミュレーションにつなぎ、空中を降下するプロシージャルの雨と側溝の水のシミュレーションを組み合わせることに成功しました」

もちろん、さまざまなタイプの水と雨は、何らかのインタラクションが必要です。自然なインタラクションを実現するために、雨のアセットのほとんどをジオメトリとして処理しました。例外は、地面の波紋、薄い泥の層、濡れた衣服、屋根板などです。

水をジオメトリとして明示的に扱ったことで、直接的なコントロールが可能になりました。ルックデベロップメントでシェーディングシグナルを視覚化する必要がなく、クローズアップにも耐えられます。また、雨天における草木のアセットもシミュレートし、葉に動きをつけました。これで、雨粒に打たれている様子が表現できます。Houdiniのプロシージャルは、リファレンス映像をもとに自然現象としての水の振舞いを再現するのにぴったりのツールです。アミットが担当した窓を流れる雨はそれを実証しています。

アレクシス・アンジェリディス | ピクサー エフェクトリード




キャラクタとインタラクションする水もまた、重要なシミュレーションでした。「しぶきがあがる場所を決め、インタラクションとアニメーションを同期させる作業は、カイリー・ワイズミュラーとアミット・バッカーが力を合わせて慎重に行いました。成田裕明は闇に隠れて歩くキャラクタからしたたる水滴をシミュレートし、クシシュトフ・ロストは多数のキャラクタに濡れた質感を与えました。雨のふるまいを研究するために、「トイ・ストーリー」の過去作品のおもちゃにシャワーを注ぎ、Flipシミュレーションで分析しました」と、アンジェリディス氏。

アンジェリディス氏はこう続けます。「環境の作成には、ライティングチームとの密な連携が大きく貢献しています。雨は「視錐台」のかなりの範囲を占め、それはまるで、照明によって明らかになる視覚エネルギーのキャンバスのようでした。ジェシー・ホランダー、ロイド・バーンバーグ、エイミー・ジョーンズは、雨の激しさを一定にするためのルールを導き出しました」

このシーケンスをワークフローの観点から振り返ると、データをどう扱うか、どうレンダリングするかを決定付ける1つの要因は、雨の表面は非常によく反射するという事実でした。チームが「十分な情報に基づいて判断を下せるように、ショットのすべてを知る必要があったわけです」と、アンジェリディス氏。

HoudiniとUSDの組み合わせは、パイプラインの各部をつなげる万能のツールです。Houdiniを使えば、Presto(ピクサー独自のアニメーションツール)からUSDをインポートしたり、USDをKatanaとRenderManにエクスポートする必要がなく、USDのPythonバインディングはセーフティーネットになってくれます。また、RenderManチームは、サーフェス、ポイント、インスタンス、カーブ、ボリュームなど、どんなタイプのジオメトリにもしっかり対応する優秀な汎用レンダラを提供してくれました。長年、生産性を下げてきた薄いボリュームにも優れた結果を出してくれました。

アレクシス・アンジェリディス | ピクサー エフェクトリード


Houdiniでストーリーを語る

豪雨の中の救出劇は、この映画のHoudiniによるシーケンスの皮切りであり、中心でもありますが、Houdiniが真価を発揮したシーンやアセットはほかにもたくさんあります。たとえば、「トイ・ストーリー4」のシミュレーション部門は、次回作のために全般的な最適化の方法を探してきました。改良の必要性を感じていた領域の1つが、シーンで目立つ、ヒーローの草木を扱うパイプラインでした。





シミュレーション部門のテクニカルアーティスト、マシュー・ベンソン氏は次のように話します。「キャラクタと草木のインタラクションは、以前から問題になっていた領域です。時間がかかり、イテレーションが困難です。Vellumが登場したときには、我々を長いこと悩ませてきた問題を解決するための明快なソリューションだと感じました。新しいパイプラインでは、プロシージャルの植物をUSDファイルにベイクし、それをHoudiniにインポートして、Vellum経由で実行し、再びアニメーションポイントオーバーレイのUSDファイルとしてエクスポートします。プロセス全体がずっとすっきりして、アーティストにとっての使い勝手もずっとやさしくなっています。結果を得るまでの時間は大幅に短縮され、インタラクションはずっと自然になりました」

映画の中で、キャラクタたちは移動遊園地を訪れます。この遊園地の何百というネオンや光をアニメートしなくてはなりません。ここでもHoudiniが活躍しています。遊園地の光のアニメーションには、キャッシュされた乗り物や売店のUSDファイルから読み込んだ電球のポイントインスタンサを使っています。「ジオメトリのパラメータ化と、動きのあるシンプルなジオメトリから転送したスペースのアトリビュートを使用した式が、電球のオン/オフのベースになっています。プロシージャルとシミュレーションで、現実世界の物理を模倣した変化や減衰を加えました」。こう語るのは、セットテクニカル/エクステンションリードのデーヴィッド・ルオー氏です。





ほこりが舞う、広いアンティークショップのシーン。セットエクステンションチームは、ダストや小さいカケラといった、ある程度の大きさのある、粒状の要素を生成するHoudiniプロセスを開発しました。「最初の分布の生成、キャラクタとのインタラクションのヒストリのシミュレート、アーティストにとって柔軟性の高いワークフローの確立。どの側面からも、Houdiniが不可欠でした。加えて、最適化のための戦略として、Houdini Engineによるレンダリング時のプロシージャルもダストに使用しています」と、ルオー氏。





アンティークショップのシーンで雰囲気を演出するのは、あちこちに張られたクモの巣です。これも、Houdiniのシミュレータで生成しています。実際にクモが複雑な構造の巣を作るときの動きを模倣しています。ルオー氏は、次のように話しています。「アーティストは、クモの巣を張りたい箇所を指定して、最初の糸をあちこちに撒いていくだけです。あとはデジタルのクモが、ジャンプしたり、既存の構造を変化させたり、新たに糸を吐いて巣を作ってくれます。Smoothingフィルタを使って糸をピンと張ったり、コンストレイントシミュレーションを実行して現実世界の物理を加えることもできます」






コメント

  • weizhongyuan 3 ヶ月, 2 週間 前  | 

    希望houdini能有中文版,中国有13亿人的市场。中国的科技公司现在都在飞速的发展,动画,影视也都是在迅速的发展。中国市场前景广阔。

    • rexpanyue 3 ヶ月, 2 週間 前  | 

      版权是个大问题啊。亲。。哎

  • ZebangZhang 2 ヶ月, 3 週間 前  | 

    mo mo da

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